吊るし

「吊るし」って言葉ご存知でしょうか。
私が子供の頃は既製服のことをそう言いました。
「吊るす」という言葉から悪いことを連想するのでしょうか、私の周りの大人は「吊るし」は縁起が悪いもの、粗悪品という扱いをしていました。
着るものは、自分たちで縫製するかオーダーするかかがほとんどで、「吊るし」を買うことはめったにありませんでした。
父が重機の、バリバリの営業マンとして働いている時期は、ワイシャツ、背広はすべてオーダーしていました。
大学卒業生の初任給が3万円の時代に背広は5万円、ワイシャツは1万円ぐらいのものを頼んでいたようです。高級品のほうだったのかも。
私も小学校高学年の頃から遠足とか卒業式とかの大きな行事に合わせて年に何回かオーダーしてもらっていました。
私が二十歳の頃、母はオートクチュール仕立てをする人の所に洋裁を習いに行きはじめ、自分、年ごろを迎えた娘たちの物を次々に縫っていました。
私は甚だしい時は月1着ずつスーツを縫ってもらっていました。それも市中の目抜き通りの生地専門店で買った生地で。


前に、知人の義祖母さんが昔洋服を銀座でオーダーしていてその値段は1着30万だった聞いてとても驚きました。
聞いたときは、私とは二桁ぐらい違う桁違いの話と思ったのですが、今になって1桁ぐらいの違いではなかろうかと負け惜しみ気味に思っています。


ムスカリが1本だけポツンと。