赤いそら豆

私の大学の専攻学科の定員は1学年が20数名で同期の女性は私を入れてたったの5名。
その中の一人美智子さんとは、生まれ故郷が同じ、関心事に共通の部分が多いということがあってずーっと親しくさせていただいていました。
共通の関心事の一つが園芸。彼女は野菜作り、私は花作りの違いがありましたが。
彼女は家業を手伝うかたわら、借りた畑であるいは買い求めた古屋付の庭で、積極的にいろんな変わった種類の種を集め、育て、収穫物を親戚、友人、知人など送っていました。
私の所にも、買うと高い、買おうと思っても買えないもの、例えばらっきょ、櫓ネギ、コンニャクイモ、グリンピース、赤いそら豆、ジャンボピーナツなどなどを、毎年食べきれないほど送ってくれました。
毎年恒例の事だったのでさしてありがたいとも思わず美味しくいただいていました。中でも赤いそら豆はことのほか気に入っていました。
豆ごはんにすると、お赤飯のようなきれいな色の、普通のそら豆のように皮が口に残らず甘くてとても美味しい豆のごはんになるのでした。
三年前の春、これが最後とまたいろいろな野菜を送ってくれた際、そうか借りていた畑は返すのか、別宅の庭はあまり広くないものなあ、人に送るほど野菜は作れなくなるわなあと解釈し、赤いそら豆だけはこれから自分で作るかと考えて、もらった豆のいくつかを種まき用に残しました。

その秋彼女はあの世に逝きました。(私は彼女の病気の事を何も知らなかった―彼女は自分の病気の事を殆どの人に言わなかったようです。お兄さんでさえ知ったのは亡くなる1週間前だったそうですからーので、それは今なお驚愕の出来事です。)

形見となった赤いそら豆を心を込めて蒔きましたが、私は種まきが下手なので数本しか発芽させられず、当地の冬はそら豆には寒すぎることもあってとうとう彼女の赤い豆を絶えさせてしまいました。

去年ある大手の種苗店で「赤いそら豆」を買いました。赤いけれど彼女のそら豆より大きい別物でした。それにまた冬に枯れさせてしまいました。
今年いろいろ検索してある所から取り寄せた「初姫蚕豆」、今日届きました。去年のと一緒。赤いけど大きい。彼女のそら豆はもっと小さい。
またまた検索して「越前そら豆」というのを見つけたので今日発注しました。今度こそ彼女の「赤いそら豆」でありますように。彼女の「赤いそら豆」と同じものだったら、一段と寒さ対策をして育てなければ。


彼女が作業日記を書いていたサイトの仲間のブログを読むと、美智子さんが、もち麦金時草、すくなカボチャ、赤い空豆月桃などの忘れ形見をあちこちに遺していることがわかります。
今さらながら彼女の「すごさ」を思い忍んでいます。


リコリス だんだん赤い筋が濃くなってきました。




ヤマボウシの実 熟した実は食べられます。外皮は硬くて食べられません。果肉は黄色でねっとりしていてとても甘いです。